登校拒否の原因

登校拒否、不登校の問題を議論するときに感じることが有る。それは対応している多くの臨床心理士や研究している研究室の教授、そして精神科医についてである。かれらは登校拒否、不登校の原因として、子供の側のいろいろな原因をあげている。それらは、彼らが観察しだした直前付近の、子供の症状や行動を分析して結論を出している。ところが、子供達が出しているいろいろな症状や行動はすでに結果であることである。子供達がいろいろな不適応行動や神経、精神症状を出す前に、子供達はすでに辛い経験をいくつもして、その結果、ついに耐えきれずに神経、精神症状を出すとともに、登校拒否不登校の行動に出ていることである。つまり、子供がいろいろな不適応行動、神経、精神症状を出すことと、登校拒否、不登校を生じる原因とは同一の物であることである。登校拒否、不登校の原因として探さなければならない物は、子供がいろいろな不適応行動や神経、精神症状を出す前にある事実である。子供の元気なときから、元気を失いいろいろな不適応行動や神経、精神症状を出す間(多くは子供が学校へ行き渋っているとき)にあるという事実である。このことは、既に登校拒否、不登校を起こした状態の子供を分析しても解らないことである。子供もその親も、全く気づいていないことである。登校拒否、不登校、そしてその結果生じた引きこもりを克服した子供や親が、その過去を振り返って初めて解ることである。

 現在、登校拒否、不登校、引きこもりを克服した子供や親たちが、声を合わせて、登校拒否、不登校の原因に精神疾患はないと言っている。政府もそれを認めている。しかし、それでも登校拒否、不登校の原因に精神疾患の存在を主張する人たちがいることをどの様に理解すべきであろうか?また、ある人達は、登校拒否、不登校の原因として精神疾患は無いが、その経過の中で精神疾患が隠されている、つまり経過の中で精神疾患を発病しているとして、今まで通り対応している人たちが多い。しかし、精神疾患としての症状がそろっているからと言って、必ずしも精神疾患ではないのである。登校拒否、不登校、引きこもりでは、精神疾患がないのに、精神疾患に見られる症状を必然的に出すことが多いから、登校拒否、不登校、引きこもりに見られるいろいろな精神症状から、精神疾患とは診断できないのである。

登校拒否、不登校問題を考えるときには、登校拒否と不登校の違いをはっきりと認識する必要が有ります。曖昧に使うと、不登校の原因はいろいろあるというような結論を出す人たちが出てきます。

登校拒否とは、子供が自分の意志で、行動で、いろいろな神経症状や精神症状を出して、自分から学校へ行こうとしない、自分からは学校へ行けない状態を言います。それ故に、強制されて学校へ行っている状態、他人に学校へ連れて行かれている状態でも、登校拒否の状態です。

不登校とは、ただ単に、子供が学校へ行っていない状態です(政府の定義は30日以上)。その原因には登校拒否や病気などもありますが、登校拒否、不登校の議論の場合、登校拒否で学校へ行っていない場合を不登校と表現しています。

定義から言うなら、不登校は登校拒否の一部です。登校拒否に内含される物です。

 ここで登校拒否と不登校の時間的経過を示しておきます。子供は元来、元気が良く素直で協力的で、何かを求めて成長しています。ところが主として学校内で辛い経験を繰り返し受けることで、子供は性格の変化を生じてきます。その結果、恐怖を感じやすくなったり、いじめを受けやすくなったりします。その状態で辛い経験を繰り返すと、辛くする相手に対して回避行動を取るようになります。学校内で辛い経験をすると学校を回避するようになります。学校へ行き渋るようになります。この状態が登校拒否の始まりです。それでも学校で辛い経験を続けると、腹痛、頭痛、吐き気など、自律神経の症状を出してきます。そして、ついには学校へ行けなくなります。この学校へ行けなくなった状態が不登校の状態です。つまり不登校とは、登校拒否の内で学校に行けなくなった状態を言うことになります。不登校に先行して子供は登校拒否を生じており、不登校の原因は登校拒否の原因から派生しています。精神症状は子供によって異なりますが、殆どの例で自律神経症状に遅れて、いろいろな形で出てきます。

 現在、殆どの医者や登校拒否、不登校、引きこもりの専門家と言われる人たちは、対応する子供達の置かれている状況や、出す目立つ症状、その行動から、医学や心理学、自分たちの経験と照らし合わせて、子供達の心の分析をしています。子供達の置かれている状況、出す症状、その行動は子供によっていろいろです。それ故に不登校や、引きこもりの原因はいろいろであり、子供の側の問題点が指摘される傾向にあります。この方法は確かに、大人達にはわかりやすです。ところが対応されている子供達にとっては大変な迷惑なのです。子供達は学校や家庭で沢山の いろいろな嫌な経験をして、それに耐え続けてきています。その耐え続けて耐えきれなくなったときに、いろいろな症状や不適応行動をおこなっています。これらの症状を出すことや、不適応行動を行うことには子供の意識は関与していません。全て周囲からの刺激に潜在意識で反応しているだけです。それ故に、登校拒否、不登校、引きこもりを解決した子供達は、これらの十分達の激しい反応を殆ど思い出せないのです。記憶に残っていないのです。

 このような辛い状態の子供には、理性的な行動は殆ど不可能なのです。その、いろいろな辛い経験から耐えきれなくなって、やむを得ずいろいろな神経症状、精神症状、不適応行動を示します。そのようにし反応した結果をもとに、その子供を分析されたのでは、子供の本当の姿は見えてこないのです。間違いになります。そこにあるのはただ単に子供が辛い状態で苦しんでいるという事実だけです。登校拒否、不登校、引きこもりの原因の大本は、子供が登校拒否を始める前に、子供が学校へ行き渋り出す前にあります。その結果子供が学校へ行き渋りだしたときに、周囲の対応のまずさや、新たな子供の辛い経験から、傷口を広げて行って、不登校になり、場合によっては引きこもりになっています。

子供が登校拒否や不登校、引きこもりの辛い状態の時、子供はこの事実を口にしません。きっと口にしているのでしょうが、周囲の大人の記憶には残っていません。それは大人には信じられないことなので、聞き流されているからです。最終的に周囲の大人が子供の本当の登校拒否、不登校、引きこもりの原因を知ることが出来るのは、子供がこれらの問題を解決して落ち着いてからです。その時には自分の辛い経験を、登校拒否を起こした原因を教えてくれますが、不思議なことに、あれほど親や対応する大人を困らせたいろいろな症状や行動、事件は殆ど覚えていないことです。この事実は私の経験した100人以上の登校拒否、不登校、引きこもりの子供達が証明しています。また、私の関係している団体に属する多くの子供達も証明しています。例外が無いと行って良いほどです。

登校拒否、不登校、引きこもりの原因の究明は、子供が問題を克服して落ち着いてからでなければ出来ません。登校拒否、不登校、引きこもりの際に子供が出す症状や行動などは単に子供が辛い状態にあるという現象にしか過ぎません。その結果新たな事件が起きても、それも単なる現象にしか過ぎません。その現象が全てだと考えて子供に対応したときにはとんでもない間違いになります。しかし、現実には、殆どの医者も教師も親も、そしてこれらに関係する人々も、子供がすでに経験した沢山の辛い経験の結果生じている、そして子供が辛いと辛いと言うことを表現しているいろいろな症状や行動(それらの症状や行動は、決して登校拒否や不登校、引きこもりの原因ではない)が、登校拒否、不登校、引きこもりの原因で有ると考えて、それらの症状や行動をなくすような対応をし続けています。その対応は、それらの子供達には大変に不本意なことなのです。それらの対応は、それらの子供達を否定することになり、かえってそれらの子供を苦しめることになるのです。

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