天使が瞼に舞い降りて     表紙へ戻る

 マヤちゃんはお母さんと大の仲良し。寝る前にお母さんの読んでくれる絵本を楽しみにしています。お母さんが絵本を読めば読むほど、マヤちゃんの目はぱっちりと開いて、「もっと読んで。ねえ、もっと読んで!」とお母さんにせがみます。お母さんは「もうこれが最後よ。」と言って次の絵本を読みますが、最後にはお母さんも
「だめ、もうねる時間。また、明日読んであげるから、寝なさい。」
と言って、読むのをやめて、部屋を出ていってしまいます。マヤちゃんは
「もっと読んで。もっと読んでよ。」
と言って泣きながら、いつの間にか寝てしまいます。マヤちゃんが寝込んだ頃を見計らって、お母さんがマヤちゃんの所に戻ってみると、マヤちゃんは絵本一冊しっかりと握って、すやすやと寝ていました。お母さんはマヤちゃんを布団の中に入れると、ほっぺにチュウをして、電気を消して部屋を出ていきます。

 明日はマヤちゃんの5歳の誕生日です。お母さんはマヤちゃんへのプレゼントとして、絵本を買うことにしました。お母さんが本屋さんで絵本を捜していると、本棚から突然一冊の薄っぺらな本がぱらっと飛び出してきて、お母さんの手のひらに落ちました。お母さんは吃驚して、その絵本をしっかりと掴みました。その本をよく見てみると、表紙に天使の絵が描いてある絵本でした。本をパラパラっとめくってみると、そこには天使とマヤちゃんのような女の子が遊んでいる絵が描いてありました。お母さんはその絵本をマヤちゃんの誕生日のプレゼントとすることに決めました。

マヤちゃんの誕生パーティーには、おじいさんもおばあさんも来てくれました。お父さんも早めに帰ってきてくれて、みんなで楽しい時間を過ごしました。マヤちゃんはみんなからいろいろな贈り物を貰いましたが、お母さんがくれた天使の絵の描いてある絵本が一番気に入りました。おじいちゃんやおばあちゃんに何度もその絵本を読んでもらい、大喜びしていました。

 「さあ、マヤちゃん。もうねる時間よ。」
夜も大分更けて、お母さんがマヤちゃんに言いました。
「おじいちゃんが一緒に寝てあげよう。」
おじいちゃんがマヤちゃんを寝室に連れて行こうとすると
「お母さんがいい。お母さん、天使の絵本を読んで?」
マヤちゃんが持っていた天使の絵の描いてある絵本をお母さんに差し出しました。
「はい、はい。それじゃあ、この本だけよ。その後はいい子して寝るのよ。」
天使の絵の描いてある絵本を持ったマヤちゃんは、お母さんと手を繋いで寝室へ行きました。

 マヤちゃんはパジャマに着替えると布団に入りました。お母さんはその側に座って絵本を開き、天使の絵をマヤちゃんに見せながら、読み始めました。すると急に窓から一筋の明るい光がマヤちゃんの瞼の上に射してきました。小さくてかわいい天使が現れて、マヤちゃんの瞼を閉じてくれました。すぐにマヤちゃんはかわいい寝息を立て始めました。天使はマヤちゃんの耳元に移動して、歌を歌い始めました。
良い子のマヤは ねんねこちゃん
今日も元気で ねんねこちゃん
仲良しこよしも みいんなねんね
明日も一緒に あそぼうよね
天使は暫く歌を歌っていましたが、その後窓から空へ登っていきました。

マヤちゃんは夢の中で、天使と手をつないで空へ上っていきました。雲の上には絵本とそっくりの天使の国が有りました。天使の国には絵本のようにたくさんの天使がいました。マヤちゃんは天使たちと歌を歌ったり、歌を聴きながら踊ったり、テレビを見たりしました。天使の国にはきれいな花がたくさん咲いていました。マヤちゃんは天使たちとお花を摘んで、花輪を作ったり、鬼ごっこをして遊びました。天使の国には可愛い動物がたくさんいました。マヤちゃんは天使たちと一緒に、ウサギをだっこしたり、子犬を追いかけたり、子馬に乗ったりして、楽しい時間を過ごしました。そして遊び疲れると、マヤちゃんは天使と一緒に手をつないで、マヤちゃんの家に帰り、布団に入って、一人で寝ました。けれど翌朝になってマヤちゃんがすっきりと目覚めても、マヤちゃんは夢の中で天使と遊んだことを覚えていませんでした。勿論お母さんも、マヤちゃんが夢の中で天使たちと遊んでいたことを知りません。

 それからは毎晩寝る前に、マヤちゃんはお母さんにその天使の絵の描いてある本を読んでもらいました。お母さんが天子の描いてある絵本を開いて読み始めると、天子がさっと降りてきてマヤちゃんの瞼を閉じさせて、マヤちゃんはすぐに眠ってしまうようになりました。


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