義務教育と心の健康

 子供の成長を保証する健康として、肉体的な健康と心の健康があります。肉体的な健康はわかりやすいし、今の医療で十分に対応が出来ます。ところが心の健康については、心の健康という言葉は有りますが、心の健康とは何かという共通概念が存在していません。心が目に見えないために、心の健康を規定するのは大変に難しいです。また、心が健康であると考えられるある子供の外見的な状態であっても、別のある子供にそれと同じ外見的な状態を作ろうとすると、その子供が大変に苦しんで、心ばかりでなく肉体的にも不健康になってしまう場合があると言う事実が有ります。心の健康とは子供一人一人で異なり、そのために、これが心の健康だと具体的に決められない事実が有ります。

 心の健康とは具体的な形からでは必ずしも解りません。表面的に現れた子供の行動から判断すると間違える場合もあります。心身共に健康であると考えられていても、その実心が病んでいる場合があります。その例として、学業もできて模範的と考えられた子供が、陰でいじめをしている場合があります。心の健康を考えるときには一人一人の子供を、子供の立場から注意深く丹念に見ていく必要が有ります。現在の学校は知識に関してはmass educationです。心に関しては一人一人の子供を丹念に観察していく仕組みが出来ていません。子供は全く同じ行動をしていても、子供のおかれている条件は一人一人違うために、一人一人違う対応が先生から必要とされます。ある子供には良い対応でも、別の子供には悪い対応になることもあります。悪い対応をしてしまうと、子供の心に傷を付けてしまいます。子供の心を不健康にしてしまいます。しかし先生はその事実に気づかないことがとても多いです。この事実をふまえて、学校での心の教育は、個々の子供を子供の立場から見つめなければできません。心の教育にはmass educationは不可能です。

 健康的な心を外見的な形から規定する事はできません。けれど心の健康な部分が働いていますと、心の奥底から喜びが湧いて来ます。心の奥底から喜びが湧いてくる状態だと、健康的に心が動いています。健康的に心が働くと、心の病んでいる部分も癒してくれます。子供が心の奥底から喜びが湧いてくるように、学校では個々の子供に即した対応が必要です。少なくとも学校では、外面的な教育の成果をあげることに一生懸命になって、いつの間にか先生が子供の心に傷を付けないようにする必要があります。

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