自殺について

 私の医師としての解釈です。自然淘汰に勝って進化してきた現在の動物の脳の中には生きるための、危険から逃れるための、神経反応がいっぱいです。死ぬための神経回路は現在の所見つかっていません。たぶん無いのだろうと思います。つまり動物は自殺はできないと言うことになります。


 人間だけは自殺をします。自殺の行為はほかの動物には無いか、あっても未発達の大脳新皮質の神経回路で判断されます。大脳新皮質の思考で死にないと思います。思考の判断に、最終的に死んでやろうと決定を後押しするのは情動です。情動だけで死の決定を下すことは普通はできません。それは自然淘汰の原則に反するからかも知れません。そのための神経回路が無いことは間違い無いと思います。ところが動物にはすくみと言う状態があります。人間で言う欝状態です。蛙が蛇ににらまれると動けなくなる状態です。動物にとっては危険から身を守ることを放棄した状態です。自然界の中では死を意味すると思います。
 なぜ、このような状態があることが自然淘汰に生きのっこった動物に見られるのか、私には大きな疑問です。自然淘汰に生き残るためには不都合な神経反応です。いずれにしても、欝状態が進行すると、人間の場合、外部からの刺激に対して、自殺する行為と結びつく事になります。また、このような場合、痛み刺激に対して、痛みを感じない様になっていることも、不思議なことです。一時話題となった脳内モルフィンの為であることは分かっています。


 動物実験では逆条件反射という生物反応があります。嫌悪刺激に引き続いて快適刺激を与えると、動物は積極的に嫌悪刺激を求めようとする行為です。人のマゾ行為がこれに相当していると考えられています。ひょっとしたら、自殺もこれに相当しているのかもしれません。

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